▶ 雅楽の楽器

笙(しょう)

笙

日本で用いられている邦楽器のうちで唯一和音を奏する楽器です。笙はその形が 羽を休めている鳳凰に似ていることから、鳳笙(ほうしょう)とも呼ばれます。オルガンのようなやわらかい音を出し、雅楽の音楽の独特な雰囲気を醸し出しています。
頭(かしら)と呼ばれる椀型のものに17本の竹を差し込んだ形になっていおり、そ の17本のうち、15本に小さなリードがついていて、これが振動して音が鳴ります。 ほとんどの場合、5本または6本の音を和音にして奏します。 一般的な管楽器の場合、出したい音の音孔を開けるとその音が出ますが、笙の場 合は閉じた音孔の管の音が鳴る仕組みになっています。
また、リードが湿りやすいので、演奏前に火鉢や電熱器などで笙をくるくると回 し暖めないと良い音が出ません。

篳篥(ひちりき)

篳篥

漆を塗った竹の縦笛で、表側に7つ、裏側に2つの孔(あな)があります。
主旋律を奏することが多く、小さい楽器にしては音量も大きいですが、音域は1オクターブ程度しかありません。
葦を潰して作ったリードを用い、演奏前にはリードをお茶に湿らせて吹きやすいように調整します。
同じダブルリードの楽器にオーボエやファゴットがありますが、ヨーロッパに伝えられたものはオーボエに、シルクロードを渡って東に伝えられたものが篳篥となったと言われています。

龍笛(りゅうてき)・高麗笛(こまぶえ)・神楽笛(かぐらぶえ)

龍笛

龍笛

それぞれの笛は長二度づつピッチが異なり、演奏する曲目によって3つの笛を使い分けます。
いずれも竹製で、7つまたは6つの孔(あな)があり、長さや太さは異なりますが構造は同じです。

琵琶(びわ)

琵琶

構成の平家琵琶や薩摩琵琶と異なるため、楽琵琶(がくびわ)とも呼びます。
ペルシャからシルクロードを通って伝えられた四絃でくびの曲がった楽器で、ヨーロッパに渡ったものはリュート、マンドリン、ギターになったといわれています。雅楽の琵琶は旋律を奏でるのではなく、和音や単音でリズムを明確にする役割をにないます。
中国で現在演奏されている琵琶とは、柱の数も演奏方法も異なります。

筝(そう)

筝

現在の山田・生田流とは異なるため、楽筝(がくそう)とも呼びます。
楽器の構造は現在の琴とほとんど同じですが、指にはめる爪は異なり、絃も太いものを使用しています。
琵琶と同じく、リズム楽器としての役割を持ちます。

和琴(わごん)

日本古来の楽器で、『古事記』にも記されており、日本古来の歌曲の伴奏に用いられます。
6本の絃に楓の自然の枝を切った柱(ことじ)をたて、水牛の角または鼈甲で作られ た琴軋(ことさぎ)で絃をかき鳴らします。

鞨鼓(かっこ)・三の鼓(さんのつづみ・さんのこ)

鞨鼓・三の鼓は曲の演奏の速度を決めたり、終わりの合図をします。
指揮者のいない雅楽の演奏において、その役割をになっています。そのため、奏者は楽団長などのベテランが受け持ちます。
鞨鼓は管絃・唐楽の演奏に用いられ、二本の桴(ばち)で主に両手で打ちます。
三の鼓は高麗楽の演奏に用いられ、右手に持った太い桴で打ちます。

鞨鼓

鞨鼓

三の鼓

三の鼓

太鼓(たいこ)

管絃の時には座って打つ楽太鼓(がくだいこ)、舞楽の時には鼓面の直径が2mほど もある大太鼓(だだいこ)を用います。
楽太鼓は金属の飾りがつき、鼓面には三匹の唐獅子の模様が描かれています。
大太鼓は左方、右方の左右一対になっており、左は金色の日形(にちぎょう)と龍の飾りがつき、鼓の中央の巴は三つ巴、右は銀色の月形(げつぎょう)と鳳凰の飾りがつき、巴は二つ巴です。
二本の撥(太鼓の撥のみ他の打楽器の桴と区別され、この字を用います)で太鼓の裏側を打ちます。

楽太鼓

楽太鼓

大太鼓

大太鼓(右)

鉦鼓(しょうこ)

「鼓」の字が用いられていますが、青銅製の厚い皿型の内側を二本の桴で打つ楽器です。
舞楽の時には大鉦鼓(おおしょうこ)を用います。

鉦鼓

鉦鼓

大鉦鼓

大鉦鼓